好きなことをビジネスにする、という僅かで大きなズレ。

公開日 : 2015-08-24 / 最終更新日 : 2023-11-12

好きなことをビジネスにする、という僅かで大きなズレ。

先日、起業家仲間と話題に上がった話が面白かったので、ご紹介します。ビジネスやサービス、商品を作る側を目指す人にとっては、ある程度参考になるかもしれません。 ビジネスを立ち上げるときに「好き」なことをした方が良い、という話 […]

著者: 上山 翔太

先日、起業家仲間と話題に上がった話が面白かったので、ご紹介します。ビジネスやサービス、商品を作る側を目指す人にとっては、ある程度参考になるかもしれません。

ビジネスを立ち上げるときに「好き」なことをした方が良い、という話をされることがあります。ただ、この「好きなこと」のベクトルを少し間違うと、大きく道が変わってきます。「好きなこと」と聞くと、人はすぐに自分がやっていて楽しいことを思い浮かべるでしょう。例えば、スポーツが好きな人はスポーツと答えるでしょうし、料理が好きな人は料理と答えると思います。

好きなことと、ビジネスの辛さは同居できるのか

ただ、好きなことをそのままビジネスにした所で、そこに勝機はあるでしょうか? もしくは、好きでいられるでしょうか。仕事とは辛いこともあります。楽しいことばかりではありません。大きな苦悩もあるでしょう。その過程で自分が好きだったことも、どんどん嫌いになっていくかもしれません。

「好き」なだけでは乗り越えられないものも数多くあります。大抵、数多くの課題をクリアしても心折れないためには、強い信念や想い、理念やポリシーが必要です。それらは自分の中の「好き」な気持ちだけに存在しているものでしょうか。

例えば「音楽が好き」だったとします。もちろん音楽を作ることそのものが好きで演奏することは良いのですが、大抵の人は、長年成果が出なかったり、あまり稼げず惨めな思いをしていたりすると「もういいや」とやめてしまうかもしれません。

しかし、もし自分の音楽が誰かを支えていると知ったら? もし自分の音楽があるから、毎日を頑張っていきていられる人がいるのなら? 音楽が好きという気持ちだけで戦うよりも、ずっときついことや苦しいことに耐えられるかもしれません。それが強い想いであり、信念であり、ポリシーでもあります。強い想いは自分の外的影響で生まれることも多いのです。

また「好きだ」というモチベーションだけで勝ち得るビジネスが生まれるかといったらそうではありません。では、好きなことをどう仕事にしようと考えた時、果たして誰かがあなたの「好き」を求めるでしょうか?

もちろん「好き」であることは大切です。ただ「好き」と同時にそれが誰かから求められている必要があるのです。求められていることが、自分が好きなことであれば、成り立ちます。しかし、自分が好き、ということだけでは実際の結果が伴うことは難しいでしょう。

では、ビジネスを生み出す過程での「好き」とは何か?

歴代の優秀な起業家のみなさんや、楽しそうに仕事をしているみなさん。彼らは確かに自分の事業が好きなのでしょう。しかし、一般的に感じる「好き」とは違いがあるように感じます。「スポーツが好き」「ゲームが好き」そういった類の好きとは、何かが違う気がします。それは、どんな違いなのでしょうか。

最もメジャーなのは「問題解決が好き」という方向性です。彼らの「好き」は、世の中の「問題」や「不便」を解決することへの「楽しさ」そのものです。他にも「お金を稼ぐことが好き」というモチベーションであったり「仕事そのものが好き」というモチベーションもあるでしょう。ただ、お金よりも、仕事への楽しさよりも「問題解決」が「好き」な場合、最も結果が出やすく、折れないモチベーションが生まれやすいのです。

自分自身が解決に取り組む上で、モチベーションがあがる「問題」とはなにか。社会に何かしらの不便があって、その不便を便利にするために力を注いで、それでも「好き」でいられるものはなにか。取り組んで楽しい問題は何なのか。つまり解決することを楽しめる「問題」や「不便」そのものが、ビジネスにおいて相性の良い「好き」となるのです。

問題を解決することそのものを好きになる

よく、ひとつのビジネスに限らず、やってることがコロコロ変わるので「何がしたいんだ?」と思われる起業家や経営者の方もいるでしょう。ただ、話を聞いてきた限りは、彼ら、もしくは彼女らは、ビジネスをしていることそのものが楽しいのです。何か思わぬものを見つけて、世の中に発信したり、販売したりすることで利益を得て、世の中にも利益を与えること。その活動そのものが楽しいのです。

歴代の誰もが知る起業家もそうです。一見、自分の好きなことをやっているように見えますし、確かにその通りなのですが、皆、これが世の中を「便利」にするという確信があって商品をリリースしています。ちゃんと、自分のつくっているもの、生み出そうとしているものがリリースされた時、時代がどう変わっていくのかが見えている。単純な好き、とは一線を画したものです。

まず自分が好きで取り組める「問題」を探すこと

これが、ビジネスにおける「好き」の差です。最初にビジネスをスタートさせる時、もしくは仕事を始めるとき「好きなことを仕事にする」という言葉はよく聞きます。ただ、内的な楽しいことを軸においても、それが成功するという意味では、ハードルの高い「好き」でしょう。

もしくは仕事にしたら嫌いになってしまうかもしれない。飽きてしまうかもしれない。仕事やビジネスはそもそも、世の中の問題を解決したり、より便利にしたりするために存在します。考えるべきは、取り組んでいて楽しい「問題」や「不便」が何なのか、ということです。

まずは「問題」を探しましょう。世の中の「不便」を感じましょう。それが見えたら、どの「問題」に取り組めば自分自身が一番「楽しい」のかを考えてみましょう。常に情報感度を高く持ち、世の中の動向や未来に気を配りながら、その「問題」をどう解決するかを模索する。結果、ビジネスを立ち上げたり、理念の一致した企業に就職したり、道を決めれば良いのです。

しかも、既に問題として存在するものを相手にするので、たくさんの人の悩みを解決できます。だからこそ、解決した時のリターンも巨大です。自分自身の働く目的や理念も見えているので、やりがいも大きいでしょう。これこそ、純粋かつ結果の出るビジネスの始まり方なのではないでしょうか。

まとめ

就職活動においても、ビジネスの立ち上げにおいても、自分の「好き」だけに目を向けがちです。ただ、多くの人にとっては、解決したい「問題」や「不便」に目を向ければ、よりわかりやすく明確で、かつ何倍も充実した仕事を手に入れることが出来るでしょう。

基本的に人は「問題や課題の解決」を好きになろうとしません。個人的な好きを優先する。だから、いつまでも自分の行き先を見つけられず、同じ毎日をぐるぐる巡ることになってしまう。そういう好きは、趣味にしておけばいいのです。少なくとも誰かの役に立つことがお金に変わる資本主義社会では「問題を愛する」方がより多くの価値を提供できる選択となるでしょう。

あなたが本当に取り組みたい問題は、必ずあるはずです。日々、何かに不満を抱えていませんか? 何かに苛立つことはないでしょうか? 自分が外に対して感じていることに気を向けてみましょう。そこに気づいたら、あなただけに出来る仕事の誕生です。

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