たった1人で辿り着いたセブ島は、単純に孤独だった。
リゾートだなんて言われているけれど、それは昼間、楽しい仲間と来た時の話だ。
夜、真っ暗闇の中で、四六時中タクシーの運転手からぼったくりの交渉をされている。
そんな中、宿を探す状況に陥ったら、天国でも地獄に見えるもので。
誰かが「どんな場所でも考え方次第では天国」と言ったけれど、今だけは信じたくなかった。
セブ島には、学校を立ち上げに来ていた。
ある不動産会社の手引もあって、韓国の語学学校と提携しスタートを切る。
そのための、契約やら交渉やらのために飛行機で5時間やってきた。
ただし、まだ語学学校の契約も終わっていなければ、取る宿も決まっていない。
今後の予定がどうなるかも分からなかったし、とりあえずパートナーと集合するだけだ。
ところが、開校のリミットは決まっているという状況である。
パートナーとも出会ったばかりで、知っている人間なんて誰一人いない。
仕事仲間やパートナーも信頼とまではいかないし、友人なんてもっての他だ。
それでも、ひとまずなんとかなるんじゃないかと勝手に思っていた。
一見、普通は誰もが「不安」で仕方がない状況だったかもしれない。
実際、戦う気や覚悟は、これ以上ないほど抱えていた。
少しばかりセブ島の暗さに驚きはしたが、怖気づいたわけでもない。
ほんの数分、夜に慣れてきたら、廃墟みたいな街並みも絶景に見えるもので。
見慣れない異国には、人間を引きつけて止まない何かがある。
タクシーの運転手が、良い宿を紹介してくれると言うので、案内してもらった。
少しだけ多めにチップを支払ったが、ぼったくりとは行かない範囲だ。
中に入ると、あからさまにホームレスにしか見えないおじちゃんが笑顔で迎えてくれる。
宿の暗さもあいまって、完全にバイオハザードにしか見えてこない。
そのまま説明を聞くと、どうやら値段も格安だ。
初日だし仕方がないかと思い、部屋に向かう。
正直、まだマシな方で安心した。
ベッドの上にあるトイレットペーパーは、宿主の親切心だ。
セブ島は、いたるところのトイレに紙が無い。
ちなみに、シャワーは水しか出ない挙句、トイレはバケツで水を流さないと流れない。
セブ島1日目にして、観光とは全く異なるルートを辿ったことを実感した。
実際、全てのトラブルや、慣れない環境なんてものは、その気に慣れば、まるごと楽しめる。
もしかしたら、不安とか恐れが湧き上がってもおかしくない状況かもしれない。
でも、不安なんていう感情は、覚悟が決まってないから沸き起こる感情だ。
気持ち半端な状態で踏み込むから、もぞもぞと不安が生まれてくるのだ。
しっかり腹の底から覚悟を決めて踏み込めば、不安な気持ちなんて微塵も湧いてきやしない。
だから、何か不安で仕方が無い時は、逆に覚悟を決めるようにしている。
何かに負けそうになったときは、腰を据えて覚悟を決めること。
自分は絶対に、今のミッションを成し遂げるのだと、心に決めること。
すると不思議なことに、どんな状況だって楽しめるようになる。
翌日、どういうわけか、マニラにいた。
何かの手違いで、本来セブで集合だったはずが、マニラで集合になったらしい。
マニラはフィリピンで一番大きな都市で、セブ島から飛行機で2時間だ。
深夜にその知らせを聞いて、すぐにチケットを取り、ろくに眠りもせず飛行機に飛び乗った。
理不尽だなとは思ったけれど、不思議と面倒臭さも楽しく感じるものだ。
到着早々、飛行機のチケットを取らされる経験なんて、一生に一度あるかないか。
楽しいことも辛いことも、なんだかんだ僕らは戦ってるんだなと。
みんな人生の道中、結局は、何かと戦いながら生きている。
だから、その戦いを楽しめた人間が一番幸せなのだろう。
楽しむか楽しまないかだったら、僕は楽しめる側でいたい。
そのために必要な切符が、覚悟なんじゃないかと思う。
その夜、合流したメンバー全員で、パーティーを開いた。
それぞれ好きなお酒を開けて、音楽をガンガン慣らして乾杯していた。
フィリピンは、アジアのラテン系、なんて呼ばれているという。
彼等の笑顔と共に、いつの間にか経験の全てが特別な思い出に変わっていた。
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