「君、ホームページ制作してるの?」
アメリカ。ニューヨーク。
とあるカフェで仕事をしていたら、急に隣の男性が話かけてきた。
確かに僕のMacには作りかけのホームページが表示されている。
プライバシーもなにもあったもんじゃないなと、まず思った。
僕が肯定すると、彼は急に目を輝かせて色々聞いてきた。
何年やってるの? これまでどんなの作ったの? 得意なのは何?
技術は言語を越えるというが、専門分野を問いただされるのは悪い気はしない。
僕自信も、本場アメリカのクリエイターが何を考えているのか知りたかったからだ。
男性はエンジニアだった。
ホームページのプログラミングから、アプリ開発まで出来るそうだ。
だが、どうやらデザインがからっきしダメらしい。
話を聞いて、もしかしたら相性がいいかもしれないと脳裏をよぎる。
すると、彼はものすごい勢いで詰め寄ってきて、とんでもない一言を発した。
「一緒にプロジェクトやろうよ!」
まさか、カフェで一緒に仕事する相手が見つかるとは想定外だった。
僕は、ここは挑戦だと想い、意を決して踏み込んでみることにした。
聞いてみると、仕事はとある企業のサイト制作だった。
そこまで複雑なものではないようで、見た感じ時間もかからなそうだ。
次の日から、近くのシェアオフィスに行って、数日作業することにした。
仕事そのものは、案外すんなりと終わった。
日本人のデザイナーがそんなにブランド化されているとは思わないが、どうやら日本人のデザイナーが作ってくれたんだ、というと、クライアントが面白がって気に入ってくれたらしい。
そんなことがあるんだろうかと度肝を抜かれたが、満足してもらえたのならいいことだ。
後日、一緒に仕事をしたエンジニアにバーへ連れて行ってもらった。
どうやら、彼のオススメのバーらしいが、まったく道は覚えられなかった。
彼の友人も何人か紹介してもらえた。
すごく楽しい人達だった。
飲みはじめて暫く経つと、彼は僕に相談を投げかけてきた。
彼はどうやら、今のエンジニア職を辞めて、サンフランシスコに行こうかと悩んでいるらしい。
サンフランシスコではまだ職が見つかったわけではなく、これから探すという。
今の生活は安定していて、このまま続けばいいと思っていたそうだ。
だが、やはり、自分の中でサンフランシスコに行きたいという想いが強い。
このままニューヨークにいれば、いい仕事をずっと続けることができる。
生活も安泰で、無事結婚して子供も出来て、愛する彼女と幸せに暮らすのだろう。
だから僕は「行きたい」という理由が明確に無いなら、ニューヨークでも良いと答えた。
彼はサンフランシスコに行って挑戦したいというだけで、その先が無かったのだ。
だが彼は、迷っていた。
酒を喉に流し込み、もう1杯オーダーする。
そして、次のお酒が運ばれてきた時、彼は一言呟いた。
「続けることが目的になってしまって、挑戦出来なくなるのが嫌なんだ」
なるほど、なかなか深い。
確かに何でもそうだ。
例えば現状の生活を考えるあまり、他の新規的な案に挑戦できなくなるかもしれない。
現状に満足してしまった企業のように、永遠と同じ仕事を繰り返すことになるかもしれない。
誰もが、一度そこに踏み込んでしまうと、手放すのが怖くなる。
おまけに人生は一度きりだ。
だからこそ、彼は一歩手前で踏みとどまろうとしていたのだ。
アメリカ人は個人的に、明確にビジョンが決まってる人が多いと思っていた。
だが、こんな人もいるんだなと、なぜか親近感を覚えていた。
確かに、このまま行くと、彼の安泰な人生が見えてくるようだった。
行き先がどんな場所か見えているところに、わざわざ行きたくないということだ。
彼は、仕事でも何でも、冒険がしていたかったのだ。
継続することは、時に絶大な効果を発揮する。
それどころか、継続が全ての成功への道だ。
だが、継続することが目的になることとは、少し違う。
あくまでも、何かを達成したり挑戦するための継続でなければ、進化は止まる。
時代は常に先へ先へと進化を続けているのだ。
現状維持だけで、生き残れるほど世の中は甘くはない。
そういう意味では、彼の判断は、未来の安定を築きあげる1歩なのかもしれない。
僕らは、その場で結果を出すこと無く、別れた。
だが、彼の意思は、僕に相談する前に既に決まっているように見えた。
時に人は、誰かに確認することで、その意思を硬めようとする。
その数日後、彼はサンフランシスコに拠点を移すことを僕に伝えてくれた。
彼の報告を聞いて、僕も「未来を作るための生き方」をしなければと誓っていた。
様々な事業開発に携わり、自らも連続的に事業を立ち上げる環境下で培われた事業デザインスキルと、高品質な技術をWEB制作に組み入れた独自手法で「求められるWEBサイト」をご提供。単純なWeb開発ではなく事業およびユーザー視点から、皆様のビジネスを手助けします。
CONTACTARTICLE FOR YOUR BUSINESS