継続を目的にするな。どんな時代でも生き残るための条件とは。

公開日 : 2017-04-04 / 最終更新日 : 2023-11-04

継続を目的にするな。どんな時代でも生き残るための条件とは。

「君、ホームページ制作してるの?」 アメリカ。ニューヨーク。 とあるカフェで仕事をしていたら、急に隣の男性が話かけてきた。 確かに僕のMacには作りかけのホームページが表示されている。 プライバシーもなにもあったもんじゃ […]

著者: 上山 翔太

「君、ホームページ制作してるの?」

アメリカ。ニューヨーク。
とあるカフェで仕事をしていたら、急に隣の男性が話かけてきた。
確かに僕のMacには作りかけのホームページが表示されている。
プライバシーもなにもあったもんじゃないなと、まず思った。

僕が肯定すると、彼は急に目を輝かせて色々聞いてきた。
何年やってるの? これまでどんなの作ったの? 得意なのは何?
技術は言語を越えるというが、専門分野を問いただされるのは悪い気はしない。
僕自信も、本場アメリカのクリエイターが何を考えているのか知りたかったからだ。

男性はエンジニアだった。

ホームページのプログラミングから、アプリ開発まで出来るそうだ。
だが、どうやらデザインがからっきしダメらしい。

話を聞いて、もしかしたら相性がいいかもしれないと脳裏をよぎる。
すると、彼はものすごい勢いで詰め寄ってきて、とんでもない一言を発した。

「一緒にプロジェクトやろうよ!」

まさか、カフェで一緒に仕事する相手が見つかるとは想定外だった。
僕は、ここは挑戦だと想い、意を決して踏み込んでみることにした。

聞いてみると、仕事はとある企業のサイト制作だった。

そこまで複雑なものではないようで、見た感じ時間もかからなそうだ。
次の日から、近くのシェアオフィスに行って、数日作業することにした。

仕事そのものは、案外すんなりと終わった。

日本人のデザイナーがそんなにブランド化されているとは思わないが、どうやら日本人のデザイナーが作ってくれたんだ、というと、クライアントが面白がって気に入ってくれたらしい。

そんなことがあるんだろうかと度肝を抜かれたが、満足してもらえたのならいいことだ。

後日、一緒に仕事をしたエンジニアにバーへ連れて行ってもらった。
どうやら、彼のオススメのバーらしいが、まったく道は覚えられなかった。

彼の友人も何人か紹介してもらえた。
すごく楽しい人達だった。

飲みはじめて暫く経つと、彼は僕に相談を投げかけてきた。

彼はどうやら、今のエンジニア職を辞めて、サンフランシスコに行こうかと悩んでいるらしい。
サンフランシスコではまだ職が見つかったわけではなく、これから探すという。
今の生活は安定していて、このまま続けばいいと思っていたそうだ。
だが、やはり、自分の中でサンフランシスコに行きたいという想いが強い。

このままニューヨークにいれば、いい仕事をずっと続けることができる。
生活も安泰で、無事結婚して子供も出来て、愛する彼女と幸せに暮らすのだろう。
だから僕は「行きたい」という理由が明確に無いなら、ニューヨークでも良いと答えた。
彼はサンフランシスコに行って挑戦したいというだけで、その先が無かったのだ。

だが彼は、迷っていた。

酒を喉に流し込み、もう1杯オーダーする。
そして、次のお酒が運ばれてきた時、彼は一言呟いた。

「続けることが目的になってしまって、挑戦出来なくなるのが嫌なんだ」

なるほど、なかなか深い。
確かに何でもそうだ。

例えば現状の生活を考えるあまり、他の新規的な案に挑戦できなくなるかもしれない。
現状に満足してしまった企業のように、永遠と同じ仕事を繰り返すことになるかもしれない。

誰もが、一度そこに踏み込んでしまうと、手放すのが怖くなる。

おまけに人生は一度きりだ。
だからこそ、彼は一歩手前で踏みとどまろうとしていたのだ。

アメリカ人は個人的に、明確にビジョンが決まってる人が多いと思っていた。
だが、こんな人もいるんだなと、なぜか親近感を覚えていた。

確かに、このまま行くと、彼の安泰な人生が見えてくるようだった。
行き先がどんな場所か見えているところに、わざわざ行きたくないということだ。
彼は、仕事でも何でも、冒険がしていたかったのだ。

継続することは、時に絶大な効果を発揮する。
それどころか、継続が全ての成功への道だ。
だが、継続することが目的になることとは、少し違う。
あくまでも、何かを達成したり挑戦するための継続でなければ、進化は止まる。

時代は常に先へ先へと進化を続けているのだ。
現状維持だけで、生き残れるほど世の中は甘くはない。

そういう意味では、彼の判断は、未来の安定を築きあげる1歩なのかもしれない。

僕らは、その場で結果を出すこと無く、別れた。
だが、彼の意思は、僕に相談する前に既に決まっているように見えた。
時に人は、誰かに確認することで、その意思を硬めようとする。

その数日後、彼はサンフランシスコに拠点を移すことを僕に伝えてくれた。
彼の報告を聞いて、僕も「未来を作るための生き方」をしなければと誓っていた。

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