さて、前談はこのくらいにしまして、今日は「潜在ニーズの見つけ方」をご説明させて頂きます。
顧客が一体何を求めているのか。
欲しいと話をしているあの商品は、本当に売れるのか。
勝負の根本となる潜在ニーズについて、じっくり考えてみましょう。
マーケティングを始める上で、大切な要素が「潜在ニーズ」です。
表にはなかなか出てこない深層心理、心の奥底に隠された本当のニーズを意味します。
マーケティングを考える際、そして新しい商品やサービスを企画する際。
とある顧客の「潜在ニーズ」が何か探りあて、的確にメッセージを送るよう意識します。
顧客が本当に求めているものは何か。
何を解決すれば、顧客にとって最もプラスの感情に働きかけることが出来るのか。
上辺だけではなく、本当の意味でのニーズを把握する必要があります。
これは、マーケティングだけではありません。
ビジネスを始める際に「どんなビジネスをするか」決める際にも役に立ちます。
ところが、なかなか潜在的なニーズは顧客から引き出すことができません。
単純にインタビューやアンケートを取ればいいのではないか。
そう考えられる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、それでは上辺の意見を聞くにすぎません。
実際、アンケートやインタビューを行っても、真の本質は理解できません。
実際は顧客が持っている潜在ニーズの「5%」しか言語化されていないのです。
だからこそ、色々と工夫をする必要があります。
本当の問題はどこにあるのか。
本質的なニーズは何なのか。
例えばインタビューをするにしろ、アンケートを取るにしろ。
本質的なニーズは「どのような質問から導き出されるのか」徹底的に考える必要があります。
その上で、質問しなければならないのです。
上辺だけでアレが欲しい、これが欲しいという回答を鵜呑みにしてはいけません。
特に仮説もなく語られた情報を直接信じたところで、その価値は微々たるものなのです。
では、インタビューやアンケートによる調査が無意味か、といえばそうではありません。
質問の価値、調査の対象をよく考え、徹底的に分析さえすれば、潜在ニーズに迫ることができます。
例えば「とあるメーカーのチョコレート」を売りたいとします。
そのメーカーは「チョコレートを購入する顧客」について徹底的に調べました。
すると、なぜかチョコレートと一緒に購入される商品がありました。
それが「ケーキの材料」だったのです。
ここから見えてくるのは、チョコレートを別の料理に使うケースも多い、ということです。
そこで、該当するチョコレートの陳列場所を変えてみます。
「ケーキづくりに関係した材料の近く」に陳列したらどうでしょうか。
よりケーキづくりをしたい人が、チョコレートを一緒に買いやすくなるかもしれません。
これで1つ売り上げ改善のための案が生まれるわけです。
実際にあった例で有名なのは「ビールと紙おむつ」でしょうか。
子供を持つ男性が紙おむつを購入する際、一緒にビールを買う傾向が多い。
そんなデータが導きだされたことがあります。
結果、データを元に、どのように商品を陳列します。
ビール棚の近くに紙オムツコーナーを設置すれば良いのです。
このように、データがあれば、最も男性が商品を購入する陳列方法を考えられます。
このように、一見関係なさそうな要素と要素を深く観察すれば、関連を見つけ出せます。
データをとって、よく観察し、考えてみると、様々なことが分かってきます。
アンケートをとる場合は質問をよく考えることが必要です。
例えば、ある商品に関する質問を10問、するとしましょう。
その中で見るのは、単純なアンケート結果だけではありません。
顧客が一体何を選んで、何を選ばなかったか。
見るべきところは、組み合わせです。
集計結果を見たら、この回答を選んだ人はこの回答も選んでいる。
そんな結果が見えれば、新しい発見も見つかるでしょう。
このように、当たり前のように見えるデータをたくさん収集し、違いを見て分析する。
数字や量を見て、そこから潜在ニーズを発見する方法が「定量的」と言えます。
明確な「数」があるデータから徹底的に洗い出していくのです。
一方、定量的とはまた違った潜在ニーズ発掘方法で「定性的」というものがあります。
定性的なアプローチは「発言や考え方」のような、数字では表せない情報を収集します。
その「意味」を徹底的に考えることによって、潜在ニーズに迫る方法です。
代表的な例は、インタビューです。
ある課題や商品について8名程度で話し合う形式があります。
フォーカスグループインタビューや、ユーザーインタビューと呼ばれるものです。
このインタビューにおいて大切なのは、顧客から意見や考えを引き出すことです。
会話をしていくうちに、どう感じているのか、どう考えているのかを意識的に引き出していきます。
答えをさらに深堀りしてインタビューを行うこともします。
より深く分析していくと、様々な発見もあるからです。
時には顧客さえ気づいていなかった潜在ニーズを掘り当てたりします。
例えば、ある答えに対して下記の角度から分析してみましょう。
多角的な視点から、連鎖的に質問を投げかけていきます。
すると、定量的には測れない答え、価値観、感情などを見つけ出せます。
数値化できない意見から潜在ニーズを見つけ出していくこと。
それが「定性的」な考え方です。
では、一体、どのようなケースの時に使い分ければよいのでしょう。
定量的、定性的、どちらにも使い所があります。
どちらか片方を使っていれば良い、というものではありません。
ケースバイケースです。
どちらも使いこなしてこそ、的確にニーズを探り当てることができます。
まず、定量的に関しては「結果がなんとなく予想がついていて、確かめたい場合」に使います。
すでにいくらか商品を販売していたとします。
すると「これはこうなんじゃないか」という仮説が生まれます。
そうした仮説を検証するときに役に立ちます。
定性的データは「顧客自身も気づいていない、心の奥に隠されたニーズ」を探る時に使います。
未知の商品を作り出したい。
何かわからないけど売上が伸びない。
顧客自信も気づかないニーズには、様々なケースが考えられます。
主に、まったく予想や数字だけでは見通せない時に、定性データは役立ちます。
もっと深いところにあるニーズに関して掘り当てる時に力を発揮するのです。
一見、潜在ニーズを発掘するとなると後者の定性的の印象が強くあります。
しかし、前者も後者も合わせて使うからこそ、効果的なのです。
定性的アプローチで潜在ニーズに当たりをつけ、定量的にアプローチで確信を持つ。
そんなワークフローを設計しても良いでしょう。
どちらも状況やケースによって使い分けるからこそ、確かな効果を発揮します。
有名な定量的、定性的方法の他に、よく私たちが使うのは連想ゲームです。
ゲームというと、なんだか安い印象を受けますが、これがあなどれないのです。
例えば「新しい商品を世の中に作り出したい」というとき。
商品の本質を考えると、やがて未知の商品にたどり着いていきます。
たとえば、テレビ。
新しいテレビを作り出したいと言ったら、みなさん何を考えるでしょうか。
この場合、私たちは「テレビはどのような形が最も便利か」を突き詰めて議論します。
テレビは電波を受信して、番組を映し出します。
それだけのシンプルなツールですが、だからこそ便利に進化する幅も広くなるでしょう。
議論の結果、下記のようなポイントを定義したとします。
そんなテレビがあれば、非常に使い勝手がよいよね、という話になったとします。
では、これらの機能を実現するのはどのような形のテレビでしょうか。
今、どんどんテレビもディスプレイも薄くなっています。
理想は「シート」のような巻いて持ち運び出来るようなテレビがあればいいというのが第一段階。
第二段階としては、シートすらないことです。
例えば、空間に何らかの形で映像を映し出す「指輪」はどうでしょう。
直接頭につけることで番組を見られる「眼鏡」もいいかもしれません。
(この記事を初めて投稿したのは2015年ですが、MRという形で眼鏡は実現しましたね)
テレビというのはそもそも電波を受信して映像を映し出せればいいのです。
その形はなんだっていいわけですね。
今回は、テレビの例を出しましたが、これは一例にしかすぎません。
それぞれの商品において「どんな形が最も便利か」を考えてみるのです。
発想力次第でどんなものでも再開発できてしまうのではないでしょうか。
机の最も便利な形は何か、椅子の最も便利な形は何か。
車はどうか、音楽プレーヤーはどうか。
様々な商品が世の中にあります。
一度「最も便利な形」を突き詰めて議論してみると、いくらでもネタは出ます。
この考え方は、マーケティングにも応用できます。
例えば、ある商品が売れないのであれば、なぜ売れないのか。
その商品を購入するユーザーが、最も購入したいと思う形、購入しやすい導線は何でしょう。
「売れない本質」そして「売れる本質」徹底的に議論すれば良いのです。
理想的な道が見つかったら、ぜひ実行してみてください。
案外答えはそんな単純な議論の中にあるのかもしれません。
定量的、定性的、本質を突き詰める議論。
潜在ニーズ発見方法についてお話してきました。
ここまで書かせて頂いた内容でも充分に潜在ニーズへと迫れるます。
ただ、より便利な方法を、他に2つ、手法をご紹介しましょう。
まずは、ソーシャルリスニング。
インターネットで革命が進む現在、膨大な数の顧客の声や意見が、インターネット上に落ちています。
FacebookやX(旧Twitter)をはじめとして誕生した様々なソーシャルネットワーク。
掲示板、口コミサイト、検索エンジン、その他プラットフォーム。
それらの情報源から徹底的に情報を集めれば、膨大かつ「リアル」な情報が手に入ります。
結果、かなり重要な事実にたどり着くことだって出来ます。
ネット上の意見や情報を徹底的に拾い集め、分析する手法。
それこそ「ソーシャルリスニング」と言います。
一昔前ならコールセンターでしか拾い集められなかったような不平不満。
アンケートやインタビューから手に入れていたクレーム。
そして新しいアイディアにいたるまで。
インターネット上を見渡せば発見できてしまう世の中になりました。
しかも、ネット上での呟きは発信は、人と話す時より素直な気持ちが出ることもあります。
コールセンターでクレームを受けるよりも、ネットの情報は早く問題を見つけられます。
先回りして、潜在的なニーズや改善点などを発見、対処することだって可能なのです。
しかも、ソーシャルリスニングは、特に大掛かりな事前の準備をする必要がありません。
インターネットの検索窓、ソーシャルネットワークの繋がりから、今すぐに実施できます。
顧客の意見やニーズについて調べるのであれば、ネットで検索をかけてみてはいかがでしょうか。
ソーシャルリスニング1つとっても非常に奥が深いので、興味のある方は、勉強してみてください。
ある一定の集団の中に身をおいて、長期間にわたって集団を観察し続ける手法。
それが、エスノグラフィです。
例えば大学生向けのマーケティングについて考えたければ、大学生の集団に入り込み観察する。
主婦向けのマーケティングについて情報を集めたければ、主婦の集団の中に入り込み観察する。
実際のグループの中に身をおいて、行動を徹底的に観察します。
例えばある大学生向けのアプリを作った会社がありました。
その会社のある社員は、大学に通う形で、エスノグラフィを実行したのです。
長時間かけて調べたのは主に2点。
それらを徹底的に観察した結果、いくつかの案が誕生。
結果、改良を加え、瞬く間にダウンロード数があがった、という例がありました。
ターゲットについて詳しく知りたければ、ターゲットの中に入り込むこと。
最も合理的で現場主義で、潜在ニーズに近づける内容と言えるでしょう。
エスノグラフィは、なかなか簡単に出来ることではありません。
先ほど紹介したようなソーシャルリスニングとはちがって、準備も時間もかかる方法です。
しかしながら、大きな成果を残すことのできる手法です。
もし予算と時間に余裕のある方は、実行してみてはいかがでしょうか。
潜在ニーズを掘り起こすための方法は、まだまだあります。
私たちの知る限りでも20以上の方法があり、状況によってそれぞれの手法を使い分けます。
ただ、必ず意識すべきなのは「自分自身で考える力」が大前提だということです。
最も大切なのは、データや意見、思考や感情を分析する能力や発想力。
問題解決思考、地頭力、論理思考、デザイン思考、アート思考、クリティカルシンキング。
思考力をあげる手段は近年ブームにもなりました。
色々な手法はあれど、自分の思考力と実行力が、結果を左右することに違いありません。
日常的に何かを観察し、分析し、なぜ、そうなっているのかを考えてみましょう。
そして「自分ならこうする」という案や「こうすれば面白いのに」など考えてみましょう。
自分自身の頭から案を引っ張りだすことに慣れることが大切です。
日常的に観察力や思考力を鍛えておけば、どんな手法だって使いこなせます。
今回ご紹介させて頂いた潜在ニーズを発見する手法は役立ちます。
しかし、まずは方法論だけに頼らず、自分自身の頭で考えることを繰り返すこと。
自分自身で考えを深めることが出来て、はじめて手法は効果的に生きてきます。
ぜひ、思考力と想像力、そして手法を駆使して、潜在ニーズの発見にトライしてみてください。
今回、潜在ニーズを題材にして、幅広く扱いました。そのため、書籍のご紹介も幅広くなっています。それぞれの手法に関して、さらに掘り下げた書籍をピックアップしてみました。全体的に入門編になっています。様々な手法を使いこなすために、問題解決思考も重要な要素となってくるため、ロジカルシンキングの書籍も同時にオススメさせて頂いております。ぜひ、読んでみてください。
様々な事業開発に携わり、自らも連続的に事業を立ち上げる環境下で培われた事業デザインスキルと、高品質な技術をWEB制作に組み入れた独自手法で「求められるWEBサイト」をご提供。単純なWeb開発ではなく事業およびユーザー視点から、皆様のビジネスを手助けします。
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