何かを成し遂げたいと思う人、いや、何かを成し遂げたいと思わない人にも修得すべき能力がある。自分で考える力だ。特に若いうちに身に付けておくと人生が面白くなる。社会人経験を詰めばある程度、身について来るものではあるが、早いうちに身に付けておいて損はない。若い人が「何をやらせても細かく質問する」のは、この能力が足りていないからだ。「でも、例えば未経験の業界で全くわからなければ聞くしかないじゃない」と思う人もいるだろう。だが、実際は違う。優秀なコンサルタントに目を向けてみよう。彼らは毎回別の業界にチャレンジしているのに、自分で結論や仮定を導き出し、提案する。自分で調査し、情報を集め、まとめて提出できる。この差はなんだろうか?
答えは「自分で考える力」が鍛えられているかどうかだ。問題や課題、目の前の修得しなければいけないことを自分で考え、思考し、仮定を立てて答えを見つけ出す。この能力が鍛えられている人とそうでない人とでは、圧倒的な差が出来る。例えば、何かを修得する時。自分で修得の近道を見つけ出し、自分のものに出来る人と、なんでも人に答えを聞かなければ解決できない人がいる。この両者は修得自体は同じ速度で進んでいくかもしれないが、より応用して教わったことを使いこなせるのは、前者だ。そしてこの応用出来ることが、両者の間に圧倒的な差を作り出す。例えば、何か大きな壁にぶつかってしまったとしよう。「自分で考える力」が鍛えられている人は、どうすれば壁を越えられるかを考え、クリアしていくが、鍛えられていない人は壁の前で立ち尽くすだけだ。時間ばかりが過ぎ去り結果に結びつかない。
自分で考え、答えを出すことができる力。これこそ、人間の根本的な「差」となる。もしかすると「そんなのセンスや才能じゃないの?」と考える人がいるかもしれない。しかし、それがそうでもない。自分で考える力自体は、訓練することで身につけることが出来るものだ。ただ、全くこれらを意識してこなかった人は、修得まで時間がかかるかもしれない。スポーツと似ていて、これまで全く運動が出来なかった人が突然、あるスポーツをマスターするんだ! と言っても無理な話だ。脳に例えると、身体そのものの能力が自分で考える力、と言ったところだろうか。運動神経の高い人が、様々なスポーツに対応出来ることと似ている。身体の上手い使い方を身体が知っていれば、どんなスポーツでも入りやすい。自己解決能力があれば、どんな業界だったとしても手に入れた知識という武器を自在に使いこなすことが出来るだろう。
では、そのロジックを少しずつ、解明していこう。
まず、考える力とはなんだろうか。何かについて考えるということは、何か目的があるということだ。目的があって、それを達成するから考える意味がある。まず、目的が必要だということが分かるだろう。
例えば、ある起業家が何か自分でビジネスをスタートしたい、自分のビジネスで食べて行きたい、という考えを持っていたとする。この場合、目標を売れるビジネスをスタートさせて食べていく、ことを目的とする。だが、通常はここで終わってしまう。何をすればいいかがわからないからだ。何をすれば良いかわからないから、考えこみ、結果的に何もせずに終わってしまう。自分で考える力を持つ人は別だ。大抵の場合、連想ゲームがはじまる。例えば、何か「これ」といった革新的なアイディアを持っていなかった場合。それでもアイディアは見つけ出せる。
売れるビジネスをスタートするには何が必要になるだろうか。アイディアだ。ビジネスのアイディアが必要だ。では売れるビジネスのアイディアはどうやったら生まれてくるだろうか。今、注目されている情報を世の中から徹底的に集めてみよう。どんな種類の情報を集めたらいいだろうか。何を人が求めているかの情報だ。何をみんなは欲しているんだろうか? 何か今ある問題を解決したら良いと聞いたぞ。では何が世の中の問題なんだろうか? 世の中の問題を拾い集めてみよう。いろいろあるぞ。では自分も理解のある内容について取り組んでみたらどうだろうか。と言った具合だ。
自分で考える力のある人は、以上の過程を一瞬にして導き出し、世の中の問題やみんなの欲しているものについて調べ始めるだろう。だが、自分で考える力の無い人は、この過程を頭の中で辿れず、思考停止してしまう。連想ゲームはともかく、目的があれば、そこからたどって解決する道を探しだすことが出来る。だからまず、目的を立ててみよう。
問題は連想ゲームだ。次に自分がどんな行動を起こすべきか分かるところまで、認識を掘り下げていく。
もしこれが、事業を生み出すことではなく、企業の売上をあげることを命題としていたらどうなるだろう。まず、売上を上げることを目的とする。ではどうやったら売上があがるだろう。売上をあげるためには受注を増やさなければならない。受注を増やすためには何をすればいいだろう。お客様に満足してもらわなければならない。満足してもらうには何をすれば良いだろう。お客様に良い商品を提供することだ。と、ならないだろうか。そして、お客様にとって良い商品にするために、調べ、研究し、商品のクオリティをあげていく。
ここまでで2つの例をあげたが、どちらも共通して言えるのは「本質的に何をすればいいか」を見極めていることだ。目的からたどって「本質」まで行き着く連想ゲームを展開していく。自分で考える力とは「本質」をたどるための連想ゲームとでも呼べるだろう。あとは、この連想ゲームをどう展開していけばいいかだ。ここが難しいのだが、分解してみよう。
1. 達成するべき目的を決定する。
— 売れるビジネスをスタートする
— 企業の売上をあげる
2. 目的を達成するためには何が必要かを考える。
— ビジネスのアイディアが必要だ。
— 受注を増やさなければならない
3. 目的達成に必要な物や事の入手、達成方法を考える。
— 世の中の問題を徹底的に集めてみよう。
— お客様に満足してもらわなければならない。
4. 入手方法や達成方法を実現出来る手段を考える。
— 世の中の問題に取り組んでみよう。
— お客様に良い商品を提供すること。
目的という大枠ではじめ、どんどん関連を持つミクロな方向へと考えを絞り込んでいっているのがわかるだろうか。どんどん目的という大きなカテゴリから行動に向けて上記のステップをたどることで、実際に行動すべきことが見えてくる。
ただ、ここで注意しなければならないのが、目標設定から考えて、根本的に狙いが間違っている場合だ。例えば2の項目において、企業の売上をあげるには受注を増やさなければならない、としてあるが、例えば「別の事業を立ちあげなければならない」とした場合の判断をした場合はどうだろうか。全ての根底が覆されることになる。ビジネスの創出に関しても、2の段階で「売れているアイディアを盗め」などの選択肢が出てきたらどうだろう。より、成功に近い道をたどるために、このフローにおける1つ1つのステップにおいて、より議論を重ねていく必要があるだろう。
まだまだ「自分で考える」力についての考え方は深める必要がある。だが、大体物事を見つけ出すときの思考は上記のフローをたどっている。何か迷いや問題があった時、ぜひ試してみてはいかがだろうか。そして大切なのは、連想の道筋があっているかどうが、自分の中で議論を重ねてみること。最初はすぐに案が出てこないかもしれないが、何度も何度も試して答えを出しているうちに、きっと「自分で考える力」を身に付けることが出来るはずだ。確かに思考のフローを分析することも大事だが、最も大切なのは、自分自身の脳で何かを解決しようと考えに考え続けることなのだ。
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